派遣社員に適用される3年ルールとは?

派遣社員の3年ルールをご存知でしょうか。

派遣労働法によって、派遣社員は同じ職場で3年以上働くことはできません。とはいえ、可能なら気に入った派遣先で長く働きたいですよね。

この記事では、派遣の3年ルールの概要、できるだけ長く同じ派遣先で働く方法、派遣契約満了後の選択肢などについて解説します。

派遣のルールについて詳しく知りたいという人はぜひ参考にしてください。

派遣における「3年ルール」とは

派遣社員として働くなら自分の権利を守るために、3年ルールの内容をしっかりと理解しておきましょう。

派遣における「3年ルール」とは「派遣労働者が同じ事業所で勤務できる期間は最長で3年まで」という決まりのことです。

3年ルールは、労働者派遣法(正式名称は労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律)のなかで、派遣労働者を守るためのルールとして定められています。

同じ事業所に継続して3年を超えて派遣される見込みとなった場合、派遣元事業主に雇用安定措置(義務)が課せられます。

この場合、派遣元事業主は「派遣先への直接雇用の依頼」や「派遣元での派遣労働者以外としての無期雇用」などの措置を講じなければなりません。

派遣に3年ルールがある理由

派遣に3年ルールがある理由は、派遣労働者の保護のためです。

派遣事業の適正な運営と派遣労働者の保護を目的として制定された労働者派遣法ですが、当初は規制緩和の意味合いが強いものでした。

現に、3年ルールが追加されるまではソフトウェア開発や機械設計などの「政令で定める26業務」の派遣期間は無制限であったため、それらの業務に就く派遣労働者には不利な状況でした。専門26業務で契約すれば、正社員登用することなく派遣社員を継続して雇用できるからです。

そのような状況が問題視され、派遣社員を保護する目的で3年ルールやその他のルールが追加されて、労働者派遣法は現在の形になりました。

ここでは、3年ルールが追加された理由について解説しますので、ご確認ください。

派遣社員の雇用を安定させるため

派遣の3年ルール追加のねらいは、派遣社員の雇用を安定させることです。

派遣社員の大半は有期雇用契約で働いているため、派遣期間が終了すれば次の仕事を探さなければならず、雇用が不安定であると言えます。同じ派遣先で働き続けられる機会があっても、次の契約更新があるかはわかりません。

3年ルールがあることで、雇用の安定化措置というシステムが働くため、派遣社員の雇用状況は安定に向かいます。

3年ルールは、派遣労働者の雇用を安定化するために導入され、派遣元事業主には雇用安定化のための義務が課されるといったように、社会的に重要な役割を持っています

派遣社員のキャリアアップを可能にするため

派遣の3年ルールを追加した理由には、派遣社員のキャリアアップを可能にするためという目的もあります。

3年という一つの目安があれば、いつまでに何のスキル・知識を習得するかなどのキャリアプランを立てやすくなります。また、直接雇用という目標があれば、同じ職場で働き続けるモチベーションも高まるでしょう。

雇用形態によって待遇の差を生じさせないため

雇用形態によって待遇の差を生じさせないためというのも、派遣の3年ルールが追加された理由のひとつです。

有期雇用契約の派遣社員は、企業にとって人員調整がしやすい労働力です。したがって、3年ルールという縛りがなければ、派遣社員の使い捨てなども起こり得ます。

派遣期間の上限が設定されることで、無期雇用契約への転換が期待できるようになるため、正社員と派遣社員の待遇差が是正されるようになります。

3年ルールの例外

原則として有期契約の派遣社員には、3年ルールが適用されますが、ある条件に該当すると例外となり、ルールが適用されません。

ここでは3年ルールの適用外となる5つのケースを解説しますので、自分が当てはまるのか確認しておきましょう。

60歳以上の場合

派遣労働者が60歳以上の場合は、3年ルールの適用外となります。
この「60歳以上」というのは、派遣社員として働いて3年経過した時点の年齢で判断します。50代で働き始めて、3年経過した時点で60代になっていれば、3年ルールの対象外となり、3年を超えて継続して働けます。

期限のあるプロジェクトに従事している場合

期限のあるプロジェクトに従事している場合は、3年ルールは適用されません。
この場合、期限のあるプロジェクトは法律によって定義されていて「事業の開始、転換、拡大、縮小又は廃止のための業務であって一定の期間内(3年以内)に完了することが見込まれるもの」を指します。すべてのプロジェクトが対象とはならない点には注意しましょう。

日数が限定されている業務に従事している場合

日数が限定されている業務に従事している派遣社員は、3年ルールの対象外となります。具体的には以下の2つの条件を満たす場合が該当します。

  • ・1ヶ月の勤務日数が、派遣先企業の通常の労働者(原則として正社員)の所定労働日数の半分以下
  • ・1ヶ月勤務日数が10日以下

産前産後休業、育児休業、介護休業を取得中の従業員の代替えとして従事している場合

産前産後休業、育児休業、介護休業を取得中の従業員の代替えとして働いている派遣社員には3年ルールは適用されません。

あくまで各種休業制度を利用している従業員の代理として勤務するため、3年以上働くことになったとしても、直接雇用などの権利は主張できませんので、その点を理解しておきましょう。

3年間の途中で部署を異動している場合

3年間の途中で部署を異動している場合は、3年ルールの適用外となります。

派遣労働者の「個人単位」の期間制限は、以下のように定められています。
「同一の派遣労働者を、派遣先の事業所における同一の組織単位(いわゆる「課」などを想定)に対し派遣できる期間は3年が限度」

参照:厚生労働省「派遣先の皆様へ ➁ 派遣労働者の 『個人単位』の期間制限 」

つまり、基本的には同じ派遣先に3年以上在籍できませんが、他の部署に異動する場合は勤続年数がリセットされ、同じ会社で働き続けられます。

たとえば、派遣先企業の品質管理部で働いていたが途中から商品開発部で働くことになった場合は、業務内容が異なるため「異なる課」として判断されます。

無期雇用契約で契約している場合

無期雇用契約で契約している場合は、3年ルールが適用されません。

先にも述べたように、3年ルールは雇用が安定しない有期雇用契約労働者を保護するために導入されました。無期雇用契約の場合、原則として会社側から雇用を終了させることはできません。

したがって、労働者の雇用は安定するため3年ルールは不要ということになります。

現在は研究職派遣も3年ルールの対象

現在は研究職派遣も3年ルールの対象となっていますので、派遣という働き方を理解した上で選択するのであれば、安心して仕事に就けます。

専門知識やスキルが重要視される研究職においては、正社員での転職ハードルが高いという状況があるため、研究職や開発職に携わりたいという場合は、就職難易度が下がる派遣社員という選択肢を検討するのも良いでしょう。

また紹介予定派遣の求人なら、正社員登用も期待できます。目標としている研究職に就きたいという人は、派遣会社に登録をして求人を探してみるのがおすすめです。

研究職はこれまで特定派遣の対象だった

研究職は過去に特定派遣の対象だったという歴史があります。
元々、派遣事業は「特定派遣」と「一般派遣」という2種類の事業形態が存在していました。

2015年の労働者派遣法の改正により特定派遣は廃止され、それに伴って2つの区分はなくなって現在は「労働者派遣事業」として一本化されています。

特定派遣とは

特定派遣(特定労働者派遣事業)とは、派遣会社と常時雇用契約(期間の定めのない雇用契約)を結び、派遣先企業に派遣され業務を行う働き方のことです。

一般的な派遣社員と異なり、常時雇用のため派遣先が決まっていなくても給与が支払われ、社会保険も加入できます。

2015年に労働者派遣法が改正され、現在は「特定派遣」という制度は廃止となっています。

専門26業務とは

専門26業務とは、国が定めた人材派遣の対象となる業務のことで、ソフトウェア開発や機械設計などの専門性が高い26の業務がこれに該当します。

これらの業務に就く場合は派遣期間の制限がなくなり、3年を越えても同じ職場で働き続けることが可能でした。

労働者派遣法の改正により、専門26業務は28業務に拡大され、現在は廃止されています。

特定派遣と専門26業務が廃止された理由

特定派遣と専門26業務が廃止された理由は、派遣労働者を保護するためです。
特定派遣事業は、国に届出を出せばすぐに事業を開始できたため、誰でも派遣事業に参入できました。

その結果、たくさんの派遣会社が誕生し市場の競争が激しくなり、競争力が弱い企業は業績悪化や倒産によって、リストラや労働者に賃金を払えないという状況が起こりました。

本来であれば、常時雇用契約で安定した働き方を提供できるはずが、実際には不安定な働き方になるかもしれない点が問題となり、特定派遣は廃止となりました。

専門26業務においては、派遣期間の上限がないという点が問題です。派遣期間の定めがなければ、派遣社員という立場で働き続けることとなり、不安定な雇用状況であると言えます。

また、業務によって派遣期間の上限がないというシステムがわかりにくく、それを悪用して専門26業務ではない業務に就いているのに契約上は専門26業務として扱い、無期限に雇用するというケースも発生しました。

これらの問題から専門26業務は廃止され、その他の業務と同様に派遣期間の上限(3年)が設定されました。

【3年ルール】派遣契約満了後の選択肢

ここまでで述べたように、3年ルールという仕組みにより、派遣社員が同じ職場で働き続けられる期間には上限があります。

派遣契約終了後の働き方について考えておくことは、派遣社員にとって重要です。

では、契約終了後の働き方はどんな選択肢があるのでしょうか。大きくは、同じ会社で働き続ける場合と別の働き先を探す場合の2つに分けて考えると良いでしょう。

それぞれの選択について、以下で詳しく解説します。

同じ会社で就業継続が可能な例

派遣先企業や派遣元企業と自分が希望する条件が合えば、同じ会社で働くことが可能です。

同じ職場で3年を越えて働きたいと考えている場合は、なるべく早めに派遣会社の担当者に相談し、それが実現できるのか、どんな準備をしたら良いのかを確認しましょう。

派遣会社から派遣先企業へ直接雇用の依頼をする

同じ職場で3年以上継続して働きたい場合、派遣先企業に直接雇用してもらうという選択肢があります。

この場合、派遣会社から派遣先企業へ直接雇用の依頼をするのが一般的ですので、引き続き継続して働きたい意向がある場合は派遣会社の担当者に相談してみましょう。

また、あなたの働きぶりが認められれば、派遣先企業から直接雇用の誘いがある可能性も考えられます。その場合は、必ず派遣会社に報告しましょう。

直接雇用が必ずしも正社員としての採用とは限らず、契約社員としての雇用契約になる場合もあることに注意してください。

直接雇用について確認する際は、正社員・契約社員どちらの雇用形態になるのか、その他の勤務条件はどんな内容なのかをしっかりと確認してください。

部署異動

派遣先企業の現在働いている部署から別の部署に異動すれば、同じ職場で3年を超えて働くことが可能です。

3年ルールの定めでは「同一の派遣労働者を、派遣先の事業所における同一の組織単位(いわゆる「課」などを想定)に対し派遣できる期間は3年が限度」となっています。

つまり、部署や課を異動すれば同じ派遣先で働いても、ルール上問題ありません。

部署や課が変われば、仕事の内容も変わりますので、これまでと同じように働くというのは難しいかもしれませんが、企業文化や社内の雰囲気はわかっていますので、別の派遣先で勤務するよりは負担が少なくなります。

「今の派遣先が合っている」「派遣先で長く働きたい」という人は、派遣会社の担当者に相談して、派遣先の部署異動ができるのか確認してもらいましょう。

無期雇用契約へ変更

無期雇用契約へ変更すれば、3年の派遣期間満了後も働き続けることが可能です。

この場合の、無期雇用契約は派遣元企業である派遣会社と結びます。派遣社員は、派遣先企業が決まった段階で派遣元企業と有期雇用契約を結んで働くのが一般的です。

この雇用契約を無期雇用契約に変更すれば、3年ルールの対象外となるため、同じ職場で3年以上働くことが可能になるのです。

しかしながら、派遣会社と無期雇用契約を結ぶということは実質的に派遣会社の正社員となるということですので「派遣先企業に直接雇用される可能性」に影響を与えます。派遣先企業に直接雇用してもらいたいという人は慎重に判断しましょう。

また、無期雇用契約に変更した場合は、同じ派遣先で働けないというケースも考えられます。

派遣会社の方針によっても変わりますので、無期雇用契約を希望する場合は、自分の希望する条件を整理して、その条件を満たして働けるのか、しっかりと確認をしましょう。

別の就業先を探す場合

自分のスキルアップやキャリアアップのため、自分が希望する条件により近い職場を見つけるために、別の就業先を探すという選択肢もあります。

場合によっては派遣会社を利用した方がメリットがあるケースも考えられますので、別の就業先を探すと決めたら、派遣会社の担当者に早めに相談するのをおすすめします。

派遣会社から新しい案件を紹介してもらう

派遣社員としての就業先を探す場合は、派遣会社から新しい案件を紹介してもらいましょう。

派遣会社の担当者は、あなたが希望する勤務条件や職種・業種を把握していますので、仕事の選定から紹介までがスムーズに行えます。

ライフスタイルの変化などによって、派遣登録時に報告した希望条件と現在の希望条件が異なる場合は、その旨をきちんと伝えて、現在の希望条件に合わせた仕事を探してもらいましょう。

正社員案件に応募する

キャリアアップを目指したい人は正社員案件に応募しましょう。
転職エージェントなどの人材紹介サービスを利用すると、担当が付いて仕事を紹介してくれるので就職活動がスムーズになります。派遣会社によっては、正社員求人の案件を持っている場合がありますので、正社員を目指す人は一度派遣会社の担当者に確認するのがおすすめです。

もう1つは「紹介予定派遣」を利用して正社員を目指す方法です。
紹介予定派遣とは「派遣期間終了後に派遣先の企業と直接雇用契約を結ぶことが前提となる派遣」のことです。最長6ヶ月の派遣期間を経て、派遣先企業と派遣スタッフ双方の合意があれば、直接雇用となります。
あくまで直接雇用が条件ですので、正社員登用ではなく契約社員として採用される可能性がある点には注意してください。

また、派遣期間の働きぶりや、スキルの習得状況などを見て採用見送りとなるケースもありますので、その点も理解して応募しましょう。

理系の副業を探す

業務委託で複数の仕事を掛け持ちしながら働くという働き方もあります。

専門知識やスキルを持っていれば、高単価の案件を獲得しやすくなりますので、自分の能力を活かせる仕事を探すのがおすすめです。

特に理系の場合、高単価の副業が比較的多く、さらにプロジェクト単位で働けるケースが多いため、自分の都合に合わせて仕事の時間を確保できるので副業に適しています。

副業を専門に扱っているサービスもありますので、それらのサービスを利用してみるのも良いでしょう。

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派遣会社に複数登録する

派遣会社を複数登録して別の就業先を探すという選択肢もあります。

1つの派遣会社が持てる求人情報には限りがあるので、A社では紹介できない案件がB社では紹介できるといったことが起こり得ます。

また、派遣会社ごとに得意な業種や地域があるため、派遣会社を変えて求人の選択肢を増やすことで自分の希望にあった仕事を見つけやすくなります。

派遣の仕事を探すなら、複数の派遣会社に登録してより多くの求人情報を確認するのがおすすめです。

複数登録しても問題ありませんし、同時進行で選考を進められるなど仕事探しの面で利用者にメリットがあるので、気になった派遣会社を見つけたらすぐに登録しましょう。

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まとめ

この記事では、派遣の3年ルールの概要、できるだけ長く同じ派遣先で働く方法、派遣契約満了後の選択肢について解説しました。

派遣の3年ルールは労働者の雇用を守り、安定させるためのものです。

派遣社員においては3年という派遣期間の上限をデメリットに感じる人もいるかもしれませんが、そこは直接雇用のチャンスと捉えて日々の業務に前向きに取り組みましょう。

働きぶりが評価されれば、正社員登用にもつながります。

同じ派遣先で働くのが難しい場合、たくさんの選択肢の中から自分のキャリアプランやライフスタイルに合った仕事を選びましょう。

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